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Vol.17 2015年のWECとル・マン24時間レースを巡る動き
★ジャンル ニュースあれこれ‥

★思いつくままに感想など‥
2月6日、WECシリーズおよびル・マン24時間のエントリーリストが明らかにされた。短いオフを経て、いよいよシーズンインに向けた本格的な活動のスタートを切ったことになるが、トヨタ(TMG)の活動を中心に、ここまでの大まかな動きをまとめてみる。
■トヨタの「2015年モータースポーツ活動計画」は1月30日、トヨタモータースポーツ・ファンミーティング2015の中で発表された。総じて、2014年シーズンの活動を継続する内容だが、目新しいところでは「2017年からのWRC復帰」だろう。参戦車両ヤリス(日本名:ヴィッツ)を実車公開するとともに、S・サラザン他2名のドライバーラインナップも発表された。TMGが車両およびエンジンの開発テストを担当する。すでに車のロールアウトを終え、今後、本格的なテストやトレーニングが積み重ねられるが、準備期間の2シーズンはやや長いような気もする。かつては王者として君臨したトヨタだけに、戻るからにはいきなり勝ち負けを争える体制を確立したいと言うところだろう。
■WECについては継続参戦を表明。チャンピオンカー「1号車」を、A・デビットソン、S・ブエミとともに中島一貴がドライブすることが明らかにされた。合わせて、彼のWECフルタイム参戦も発表されている。1号車はトヨタのエースを3人揃えた訳で、2号車とのパワーギャップ拡大が顕著になるが、このことは、レース戦略上、選択肢が狭まることが想定され好ましいことではない。もう一つは1号車のチームワークに対する不安で、3人とも速いがバラバラでは元も子もない。誰がリーダーシップをとるのか気になるところだ。ま、互いにプロなのでそのあたりは克服されるだろうが‥。中島一貴の全戦参戦は以前から指摘していたことで、ようやく当り前のことが実現した印象である。2号車は、A・ブルツ、S・サラザンに加え、M・コンウエイがリザーブドライバーから昇格する。こちらは、明らかに衰えの目立つA・ブルツの続投が不安材料だ。彼はハイブリッドシステムのマネージメントに問題を抱えていると私は見ている。キレた走りを期待するのは、もはや無理だろうが、N・ラピエールのような致命的なミスだけはしてほしくない。なお、コンウエイに代わるテスト兼リザーブドライバーは明らかにされていない。ル・マン24時間に関してのコメントはなく、「全8戦に2台でのエントリーを申請中」とあるのみだったが、2月6日にル・マンも2台体制とすることが明らかにされた。肝心のマシーンについてだが、2015年仕様TS040 HIBRIDは1月中旬にポール・リカール(仏)でロールアウトを終えており、1号車の3人のドライバーが参加している。TMGは自身のFB上で「ポジティブなスタートを切った」としている。2回目のテストは1月下旬にモーターランド・アラゴン(スペイン)で行われ、2号車3人のドライバーの他に、小林可夢偉、ジャン=エリック=ベルニュ、マティアス・ベッシェが参加している。表向きは2台による走行テストそのものが目的だったとしているが、3人の内一人をテスト兼リザーブドライバーとして起用する可能性も示唆している。2回のテストを終えてバセロンは「そこそこの距離」を走行しているといい、「進歩もあったし、全てが上手くいっていて嬉しいよ」とコメントしている。実車は3月末のWEC公式テスト(ポール・リカール)前に発表される。
■ライバル達の動向に目を移してみると、ポルシェは昨シーズン終了直後に冬季テストを行い(2014年仕様919HYBRID)、ル・マン3台目をドライブするF1ドライバーのN・ヒュルケンベルクもハンドルを握っている。直後に、2015年マシーンのロールアウトを行い、今年に入ってはアブダビでの5日間テストを終えている。2月に入って、ル・マン3台目のドライバーも確定し(アール・バンバー、ニック・ダンディ)、WECシーズン開幕とル・マン24時間に向けて最も順調に取り組みを進めている。流石に、「ル・マンに勝ってこそ本当の復活」とするポルシェだけのことはある。2年目の今シーズン、圧倒的なパフォーマンスを発揮すると思われる。
一方、アウディは昨年末、モータースポーツ活動全体の2015年プランを明らかにしており、ル・マン3台体制の堅持とドライバーラインナップも決定している。引退したT・クリステンセンに代わってハンドルを握るのはオリバー・ジャービスで、彼は2014年に日本のスーパーGTで活躍するとともに、ル・マンでアウディ3号車をドライブしている。ニューマシーンの初テストも終えていて、LMP1プログラムリーダーのクリス・レインケによると「心強い結果」になったという。なお、マシーン詳細は今月後半に発表される見通しである。
復活する日産だが、昨年11月下旬にアメリカ・アリゾナでLMP1マシーン「GT-R LM NISMO」がロールアウト。以降、アメリカでテストが繰り返され、今月2日、遂に発表となった。ユニークなロングノーズ、ショートデッキというスタイルで、フロントエンジン、フロントドライブの「FF」レイアウトを選択。3リッター、V6直噴ガソリンツインターボエンジンを搭載し、運動エネルギー回生システム(フライホイールタイプ)を備え、最大出力は1250馬力と言われている。タイヤはミシュランで、タイヤ径16インチ、タイヤ幅はフロント310ミリ、リア200ミリとしている。ライバル達と比較すると、タイヤ径で2インチ小さく、リアタイヤ幅も110ミリ狭い。その他のデータは明らかにされていないが、ハイブリッドシステムに関わるエネルギー放出量は8MJ(ル・マン換算)を目指しているという。チーム代表のB・ボウルビーが「従来のLMP1マシーンの概念を全て覆した」という意欲作である。なお、レギュラードライバーに関しては、マルク・ジェネ一人だけが決まっている。彼はF1のテストドライバーも務め、ル・マンの優勝経験(2009年/プジョー)もある。また、ル・マンについては、3台エントリーを発表しており、松田次生とオリビエ・プラ、ハリー・ティンクネルの起用が決まっている。独創的なシステム選択の成否についてコメントするには余りに早計だが、あのポルシェ919ハイブリッドがロールアウトからレースデビューまで10カ月を要していることを考えると、ニッサンの5カ月は短すぎると言うものだろう。トヨタ、アウディ、ポルシェは成熟したハイレベルでの闘いを展開している。常識的に考えると、2015年シーズンのニッサンは辛苦に満ちたものになると思われる。
■終りに、今季のトヨタの闘い方について触れておこう。どう闘うかはどう闘ってきたのかについて総括することから始まる。昨年のトヨタはマシーンのポテンシャルからして全勝してもおかしくなかった。何故それが出来なかったかと言えば、「ミス」を犯したからである。ル・マンとオースチンでの序盤雷雨アクシデント(8号車)はN・ラピエールの判断ミスが原因であり、ル・マンリタイヤ(7号車)とサンパウロ決勝結果(8号車)はピットが判断を誤ったからだ。ル・マン7号車電気系トラブルは予兆があり、5分ほどの部品交換で回避できた訳だし、最終戦は最終ピットインでのフルサービス選択に問題があった。これらは決して不可抗力や結果論などではなく、避けられるヒューマンエラーだった。こういったミスが致命的な結果を招来したことを深刻に受け止め、そこを「カイゼン」することでWEC連覇は見えてくるだろう。くれぐれも、「これもレースの内」などと呑気に構えていてはいけない。
その上で、ル・マンの闘い方について、前記の通り今年も2台体制となった。TMGの木下代表もP・バセロンも「遅い車を3台揃えるより、速い車2台で闘う方がいい」とコメントしていた。強がりととるか、弁明ととるかは別にして、台数問題はリソースに要因があると考えるのが自然である。(リソース対比はトヨタ「1」に対し、アウディ「2」、ポルシェ「4」と言われている)特に、2017年からのWRC復帰を考えるとWEC・ル・マンにリソース集中という訳にはいかない。それが内部的には一昨年辺りから確定事項だったので、台数問題検討の余地はなかったのではないか。木下代表らのコメントにはこういった背景があったと考えると納得がいく。新・旧耐久王のアウディやポルシェは、高級スポーツカーメーカーであり、「ル・マン」が営業戦略上重要であることに加え、それが彼等のアイデンティティであり、伝統であるという自負があるようだ。コストをかける意義はあるし、運営にも積極的に関わるのが当然ということだろう。つまり、「3台体制」は彼等の強固な意志の現れなのだ。何より、ル・マンの勝ち方を知りつくした彼等の選択だけに合理性がある。残念ながら、トヨタの「ル・マン勝利への拘り」はライバル達より希薄で、大衆車メーカーの限界と言われても仕方がない。
最初から数的不利の状況では勝目は少ないが、勝つ可能性がゼロではない。速くて強い車をそろえ、ノーミス、ノートラブルで走りきることが最低限の条件だ。それがどれほど高いハードルかはトヨタ自身が良く知っているはずだが、あえてその道を選択したトヨタ。決まった以上、劣勢を覆し悲願を成就してほしいものだ。危惧するのは、敗北が連続し、結果を出せないままWEC撤退に至ることだ。以前のトヨタが正にそうで、TS020の時(1999年)に「所期の目的を果たした」としてル・マンを去っていった。折しも、トヨタの2017年からのWRC復帰が決定し、WEC活動も2016年シーズンで終了となるかもしれない。むしろ、その可能性というよりも、内部的には既定路線化している印象すらある。ちなみに、今季復活する日産は、最初からWEC2台フル参戦で、ル・マンには3台体制で臨む。「2年以内にル・マンに勝つ」という強気のチームのやることはやはり違う。トヨタがもたついている間に日産がル・マンチャンピオンになる可能性は充分にある。今季もスッキリしない気分のままシーズンインになりそうである。
ポルシェ919ハイブリッド
日産GT-R LM NISMO