mysoarertown.com Motor Sports(モータースポーツ)                                  2001.05 start/2013 06 30 renewal start
トップ  自己紹介  マイソアラ  登山トップ  ギャラリー  ブック  BBS  モータースポーツ 映画日記  リンク

マイソアラタウンはリンクフリーですが、予告なく閉鎖することがありますのでご了承下さい。

メッセージはこちらまで

copyrigrt(c)2001〜2004 shun1@ikeda All rights reserved

Vol.1 ルマン24時間(WEC第3戦)
★ジャンル レース
★月日 2013年6月22日(土)〜23日(日)
★場所 サルテサーキット(フランス)/ 1周13.6259キロメートル
★レースカーデータ1@ トヨタTS030HYBRID2013年仕様 8号車
★ドライバー ★予選結果 ★決勝結果
A・デビッドソン、S・サラザン,S・ブエミ 3分26秒654(LMP1 4位) 総合2位(347周1ラップダウン)
★レースカーデータA トヨタTS030HYBRID2013年仕様 7号車
★ドライバー ★予選結果 ★決勝結果
A・ブルツ、N・ラビエール、中島一貴 3分26秒676(LMP1 5位) 総合4位(341周7ラップダウン)

★思いつくままに感想など‥
2012年のルマン24時間にハイブリッドレーシングカーTS030で復帰したトヨタ。クラッシュとマシントラブルで2台ともリタイヤしたものの、速さは見せつけ、その後のWECシリーズでも3勝(インテルラゴス6h、富士6h、上海6h)を上げ「来年こそは」と思わせたものだった。
2013年仕様のTS030HYBRIDは2月中旬にロールアウト。新車は、空力やドライバビリティの効率化、トルクバンドの拡大(エンジン)、冷却効率の向上(ハイブリットシステム)が図られ、速さに直結する部分だけでなく、耐久性や乗り心地、更には作業性まで考えて設計されたという。TMGのトップ・木下代表は「ゾンビのように生き返るマシーン」と表現。ポールリカールでの連続走行テストも順調にこなし、WEC初戦のシルバーストーン6hに向けてマシンの熟成は進むと思われた。だが、4月中旬のシルバーストーンに現れたのは2台とも2012年仕様の、いわば旧型マシーンだった。3月のセブリング12hを圧倒的な速さと強さで制し、戦闘力を増したアウディに対抗できるはずもなく、3位と4位に沈んでしまう。
WEC第2戦はルマンの前哨戦スパ6hである。アウディはルマン体制を組み3台のR18-Eトロンクワトロを投入してきたが、トヨタは、7号車こそ2013年仕様だが、8号車はここに至っても2012年仕様である。疑問を抱きつつも、7号車はアウディと台頭もしくはそれ以上と予想していたので楽観視していた。が、予選では8号車と同程度の速さで、アウディ3台とはスピードにおいて明らかな後れを取っていた。レースでは僅かにいい走りを見せたが、マシントラブルでリタイヤしてしまう。8号車がアウディの一角を崩せるはずもなく定位置の4位でレースを終える。
スパ6hまでのトヨタの対応は、マシンを温存する一方で、パワーの絞り込みを図り、性能調整(BOP)を免れるという戦略かと思われた。しかし、スパ後にトヨタレーシングのテクニカルディレクターのパスカル・バセロンが「アウディのターボディーゼルが、トヨタの自然吸気V8エンジンに対し優位にある」とし、WECのレギュレーション決定権を持つACOとFIAに対し、ルマン24時間前にBOPの見直しが必要と訴えたことで、トヨタの劣勢が表面化することになる。果たして、その真偽のほどはどうか。答はルマンテストデーで明らかになる。アウディは前年の予選タイムを上回る3分22秒台を叩きだすが、トヨタは3分27秒台を出すのがやっとという状況で、バセロンのコメントを裏付ける結果となる。前年の3分24秒台にも遠く及ばない体たらく振りに、「TMGの力のほとんどをルマン対策に充てている」とする木下代表のロールアウト直後のコメントが虚しく思い起こされたものである。
本番に向けて盤石な態勢のアウディと汲汲とするトヨタ。顕著な差をWECサイドも放置できず、ル・マン直前にBOPを実施する。アウディはエア・リストリクターの規制を受け、一方、トヨタは積載燃料が3リッター増やされることとなった。このことで、両者の予選タイムは僅かに縮小するが、基本的な力関係に変化は見られない。TMGの努力にもかかわらず、2013年仕様のTS030HYBRIDは速さのない平凡なマシーンであることが明確となり、デビューが遅れた理由が実はそこにあったと考えるとつじつまが合う。ただ、ポールリカールでのテストでは昨年を上回るタイムを出しており、ルマン換算前年比マイナス4秒と木下代表の自信のコメントがあるので、もしかすると、その後に速さを奪うほどの重大な問題が発覚し、大きな修正が図られたのかもしれない。何れにせよ、アウディ優位のまま24時間レースはスタートを切ることになる。
いささかテンションの上がらぬ決勝となったが、トヨタのレース戦略は、速さのアウディに対し、燃費効率で周回数を稼ぐしかないと思われた。レースは、アウディが慎重な走りを見せたスタート直後だけトヨタとバトルとなったが、時間の経過とともにアウディが強固な1-2-3体制を築く。ラップタイムの差は如何ともしがたく、僅かにピットインラップ(周回数)でトヨタが優位にあるため、両者のギャップが一気に拡大しないだけの話であった。もう一つ、トヨタにとって有利だったのは、今年のルマンが悪天で荒れたコンディションだったということである。ペースカーが11回も導入され、アウディの築いたギャップが都度帳消しになるといったレース展開だったのだ。つまり、今年のルマンはマシーンの性能差が現れにくい展開となった訳である。ただ、ペースカー導入でトヨタもレース戦略(燃費走行で周回数を増やしピット回数を減らす)は大きく狂うこととなる。アウディ34回に対しトヨタは30回でその差が僅かに4回。これではアウディの速さに対抗できない。
3分23秒台でラップを重ねるアウディと、3分25秒台がやっとというトヨタ。急変する天気と敵失(1号車のオルタネーター破損、3号車のパンク)があったからこその2位と4位であり、アウディとの力の差はあまりにも大きいと言わざるを得ない。遅いマシーンを必至に操るトヨタのドライバー達。見ていて気の毒に思えてしまった。ただ、N・ラビエールのラスト1時間20分でのクラッシュはいただけない。彼は速いドライバーで、表彰台を狙った渾身のアタックの結果ではあるが、脆さを露呈してしまった。昨年のバーレーン(他車接触リタイヤ)や富士(2度コースアウト)のこともあり、私としては評価を下げざるを得ない。それにしても、あの7号車を僅かな時間でコースに戻したピットクルーは称賛ものだ。
もし、24時間安定したコンディションだったらどうだったか。トヨタの燃費戦略が功を奏す可能性もあるが、アウディが速さでアドバンテージを築き逃げ切る公算が大きく、トヨタは表彰台を逃したかもしれない。ただ、いくら速くてもトラブルやクラッシュを抱え込んでは勝負にならない。ノントラブルで走りきった優勝のアウディ2号車と2位になったトヨタ8号車はこのことを改めて証明した(8号車もレース終了間際にP2カーに寄られてあわや接触というシーンが‥)。ともあれ、今年のトヨタは、完走や表彰台を狙っていたのではなく、目標はあくまで優勝だったはずである。その意味では惨敗であり、結果を深刻に受け止めるべきである。
莫大な金と時間をつぎ込んで、結果として前年より遅いマシーンを造り上げたTMGという組織は一体何なのか。デビューイヤーで3勝を上げ慢心があったのだろうか。技術力だけでない何かがトヨタには欠けているような気がする。思えば、8年間闘い未勝利に終わったF1、3度の総合2位で「目的は達成した」として撤退したルマン。トヨタは何のためにモータースポーツを戦うのか。その根本理念が希薄であり、アウディとの差は実はこの辺りにあるような気がする。大レースにおいて勝利するための車造りと戦略が決定的に劣っている印象を受ける。来年からは、レギュレーションも大きく変化し、あのポルシェも参戦を表明している。既にマシーンはロールアウトを終えており、走らせるからには勝ち負けできるマシーンに仕上がっているに違いない。これで、トヨタの勝つチャンスは更に小さくなる。千載一遇のチャンスを逸したという後悔は果たしてトヨタにあるのだろうか。ここまでの車造りや闘い方について、トヨタがどのような総括を行うのか注目されるところだ。
9月からのWEC後半戦、そして、2014年、新レギュレーション下のWECやルマン。トヨタには否定的状況が続くと思われるが、くれぐれも「いつか来た道」を引き返しては欲しくない。ともすると、マーケティング重視で、勝機なしと見ると撤退決断の速いトヨタである。市販車の技術でルマンを制するという大義を忘れず、目的を達成するまで粘り強く取り組んでほしい。レースにおける実績や高い技術力、BOPに関わる政治力、歴史と伝統に裏打ちされた車文化‥。欧米ワークスの牙城は強固で、打ち破るには気の遠くなるような時間と努力が必要であろう。それ故、トヨタは愚直に進むしかないのである。圧倒的な速さと強さでルマンを制するトヨタを見たい。