143.トムラウシ山(表大雪/2141M) | ||
達成感はイマイチでしたが紅葉見ながらノンビリ登山も良いものです | ||
9月末ともなれば高峰からは初雪の便りも届き、折からの紅葉とも相まって山が最も美しいシーズンである。連休後半、知人のオオトモさんとトムラウシ山に登ることとなった。ちなみに、彼とは同年齢で、単独で山に向かうという共通点があった。「いつか一緒に」と話した経過があり、彼のリクエストでトムラウシを選んだという訳である。本当なら、沢から上がりたかったが彼はやらないので久々の夏道登山となる。 眠い目を擦りながら私の運転でトムラウシ温泉短縮登山口に向かう。8月に遭難救助で来ているが、その時よりは林道が荒れている。どうやら先の大雨のせいらしい。登山口には5台ほどの車が並んでいるが、本州ナンバーが多い。やはり百名山効果なのだろうか。6時過ぎに山慣れした老夫婦の後を追うように登山口を出発する。オオトモさんは屈強な身体つきで、体力・脚力ともに私より上と見たが、久々の山というのでややゆっくり目で歩き出す。だが、温泉に降りる分岐に着く頃には息が上がっていることに気づく。更にスローダウンし、小休止しながらの登高となる。ペース設定の難しさを痛感しながら針葉樹林帯を行く。カムイ天上の手前はちょっとした急登で、いつもぬかるんでいるところだが、水で泥が流され石がゴロゴロと露出していた。こうなってしまうと歩きやすいものだと思っているうちにカムイ天上に着く。玉の汗をかくオオトモさんは中間着を一枚脱ぐ。ここから3分も歩くと新道分岐だ。以前はカムイサンケナイ川に下るルートだったが、川沿いのルートは増水時の度重なる事故発生で廃道となり、尾根の背をそのまま辿る新道が開削されたのだ。密集した笹原に幅2メートルほどの刈分道が続く。ぬかるんだ所もなく、適度なクッションが効いていて歩きやすい。前半は東大雪の山々を背に、後半は十勝連峰を望みながらの登高でロケーションは中々いい。ダラダラとした登りを終えると緩やかに下り始めるる。小さな沢形を横切る木道を渡る頃になると、正面に色付いた前トムラウシ山南西斜面が望めるようになる。そこからジグを切ってカムイサンケナイ川右岸まで降りる。ほどなくコマドリ沢出合で一息入れることにする。行動食を口にしながらボサボソと山談義(笑)。途中でパスした老夫婦が休まずコマドリ沢を上がっていく。その健脚ぶりには二人とも驚くばかりだ。私達も後に続く。コマドリ沢付近はコース中最も鮮やかな紅葉でデジカメで数カット撮る。コマドリ沢上部の岩場ではナキウサギの声が私達を迎えてくれるが、姿は見ることが出来ない。黄色いコースサインとロープに導かれて前トム平への登りにかかる。この辺りが一番辛い。振り返ると、緩やかに弧を描く冬尾根が印象的だ。単独登山者が下山してくる。聞けば南沼に泊り、昨夕と今朝の2度も頂を踏んだという。素晴らしいご来光だったに違いない。時おり、ハイマツの枝が揺れシマリスが可愛い姿を見せる。オオトモさんはナイスカットをものにしたようだが、私はダメだった。前トム平まで上がってしまうと急登は南沼までない。ハイマツ帯を抜けケルンの岩場まで来ると正面にトムラウシ、右手にニペソツや石狩連邦、背後には日高の山並みと、眺望は一気に広がる。南東斜面中腹の紅葉が実に鮮やかだ。小さなアップダウンがボディブローのように堪えるが、水場と奇岩が織成すトムラウシ公園の美しさがそれを忘れさせてくれる。南沼分岐からは最後の急登が始まる。コースサインから外れないように気を配る。足下だけを見ているとあらぬ方向に行ってしまい、慌てて戻ることも。概ね右から回りこむ感じで直下にいたる。急な岩場を一登りで待望の頂上だ。先客は6人ほど。予想通りの大眺望が私達を待っていた。快晴・微風、これ以上ないというロケーションである。ここから見るとニペソツは鋭さよりも雄大さを感じるし、石狩連峰は険しさを漂わせている。十勝連峰へ続く縦走路も見えるが一度は足を運んでみたいものだ。静子と登ったオプタテ、今春チャレンジした境山、端正な下ホロ、どの山にもある思い出が蘇る。幾重にも重なる日高の山並みも美しい。おにぎりとお茶、ザンギで昼食を済ませる。が、オオトモさんからカップラーメンとりんごを頂く。お腹も感激も満腹状態だ。友人に写メールを送るも圏外表示が出て中々送信できない。3分程粘った挙句ようやく送信を完了する。これほどの好条件でどうしたことだろう。ドコモよりAuの方がいいのかなあなどと思ったりする。 昼寝でもしたいところだが(実際寝ている人もいた)、復路もきついので12時20分に下山を開始する。とにかく、岩場が多いので膝や腰への負担を和らげるような静かな歩行を心掛ける。登りは体力、下りは技術とはよく言ったものである。紅葉したウラシマツツジが美しいトムラウシ公園から前トム平、コマドリ沢と下降していく。素晴らしい景観を目に焼きつかせる。水流のほとんど無いカムイサンケナイ川を横切り右岸の登山道に移る。この川の流域面積は広いので、雨など降ろうものならアッ問いうまに増水する。私が初めて登った時もそうで、下山時に様相が一変した川を見て驚いたことを思い出す。新道開削は正解だろう。その新道だが、高度にして100メートルほどだが、尾根への登り返しがとても辛い。13回ほどのジグを切るとようやく傾斜も緩む。後は下る一方なので、肉体的にも精神的にもプレッシャーから開放される。午後になっても全く穏やかな天気が続いている。さながら、ピクニック気分で順調に下降していく。カムイ天上を過ぎ、針葉樹林帯に入った辺りで、先行していた登山者が戻ってきた。私達を見て、短縮登山口への分岐を見逃し、間違ってトムラウシ温泉へ降りるコースに入ってしまったのではないかと問う。私がミスコースしていない旨を伝えると安心してUターンしていった。私は思わず苦笑してしまった。私も初めてこのコースを歩いた時、似たような不安を抱いたからだった。分岐から左に折れ短縮登山口へ向かう。温泉までの1時間の下降を考えると、僅か15分700メートルのこのルートは本当に嬉しい。午後4時前に下山を完了する。オオトモさんとは初の山行で不安がまったくないと言えば嘘になる。それだけに無事に山行を終えることが何よりも大切なことだった。大きな安堵感に包まれる。 久しぶりのトムラウシ、久しぶりの夏道登山、天候にも恵まれ良い山行だったが、沢行のような強烈な充実感はない。平たく言えば刺激が乏しいということだろう。次回、トムラウシのピークを踏む時は西沢から遡行しよう、そんな気持を新たにする。 |
■山行年月 |
2006.09.26(火) |
■天気 |
快晴 |
■同行者 |
オオトモさん |
■山行形態 |
夏道登山 |
■コース(往路/帰路) |
トムラウシ温泉短縮 |
↑ |
コースタイム | |
午前3時自宅(池田)出発 | |
地点分岐等 | 時間 |
短縮登山口 | 6:05 |
カムイ天上 | 7:00 |
コマドリ沢出合 | 8:20 8:35 |
前トム平 | 9:15 |
トムラウシ公園 | 9:45 9:55 |
南沼分岐 | 10:30 |
トムラウシ山 | 11:05 |
所要時間 | 5:00 |
トムラウシ山 | 12:20 |
南沼分岐 | 12:35 |
トムラウシ公園 | 13:00 |
前トム平 | 13:20 |
コマドリ沢出合 | 14:00 |
カムイ天上 | 15:05 |
短縮登山口 | 15:55 |
所要時間 | 3:35 |
総所要時間 | 8:35 |
自宅午後7時45分到着 |