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211.北戸蔦別岳(北部日高/1912M)
怒涛の大高巻きに耐え美しき滑遡行を楽しみ急峻なカールバンドを上がる
北日高の北戸蔦別岳は2003年に1967峰山行の際に立ち寄っているが、その時は二岐沢出合を起点とする夏道登山だった。今回は、二岐沢から三ノ沢を遡行し三ノ沢カールを経てピークに至るルートである。「北海道の山と谷」によれば、グレードは「!!」で、同書掲載の同グレードでは札内岳ガケノ沢、トヨニ右股沢以来3本目である。私自身、単独の沢登りとしてはこのグレードが上限と考えており、プランニングの段階から緊張感を覚える。本当は、山泊で神威岳・エサオマントッタベツ岳沢縦走を予定していたのだが、天気が安定しないため、北戸蔦別岳沢ルートに転進したものである。
早立ちこそ肝要 このルート、復路は夏道を使用出来るものの、二岐沢出合からは8時間近くを要するロングルートである。前日夕刻に二岐沢出合まで入り車中泊する。当日は3時過ぎに起き、4時35分に歩き始める。ヘッデンこそ要らないが、周囲はまだ薄暗い。陽が短いこともあり、出来るだけ時間に余裕を持ちたいというのが早立ちの理由である。北電が管理する立派な道路を歩くこと40分、取水ダムに到着する。ここからは二岐沢左岸の登山道がルートとなる。日高の登山道としては極普通だが、大雪などに比べるとやはり荒れた印象は拭えない。二ノ沢出合で沢スタイルに変身する。ここで登山道に別れを告げ、二岐沢に入渓する。暫くは広い川原を適当に歩いていくが、水量も多く水音も大きい。このところの天候不順でやや増水しているのかもしれない。身体は充分に起きているはずだが、途中でバランスを崩し左半身を水につけてしまう。沢登りなので濡れるのは避けようがないが、必要もないところで水没するのは情けない。
それなりの用意 沢が緩やかに右に曲がると前方に尾根の張り出しが見えだし、ほどなく地形図Co943pの三ノ沢出合である。倒流木のデブリのような荒れた風景が広がっている。何となく気が滅入るが、それもCo1000付近まで上がると沢はスッキリしてくる。川床は岩盤が露出し、左岸は垂直に立つ黒い岩肌に覆われる。そして、そこを落ちる細い水筋‥、美しさとともに迫力も感じる景観である。だが、沢が左に曲がる次の瞬間、身体は一瞬にして緊張に包まれる。奔流する小滝の奥にやや斜めに流れ落ちる大滝が視界に飛び込んでくる。噂の35メートル大滝である。大滝直下まで上がって、その迫力を体感したい気持ちはあるが、そこから遡行ルートを見出すのは至難の業らしい。小滝まで戻るのも難行となりそうである。前掲書の「山谷」によると、小滝の上には、小滝とゴルジュがあり、大滝へと続いていると言い、ここからは「果敢な登攀意欲とそれなりの用意が必要」とある。当然ながら、私にその準備はなくり、無難に右岸を高巻くことにする。
さながら木登り だが、この高巻きはこれまで経験したことのないハードなものだった。細い尾根筋を灌木を頼りに登るが、とにかく傾斜がきつく身体を持ち上げるのがシンドイ。ブッシュの隙間から見える大滝ははるか先、果たしてどこまで上がればいいのやら。いい加減上がった所からトラバースしてみるが、直ぐに絶壁に行きつき、再び上に上がる。こんなことを3回ほど繰り返しようやくトラバースに移る。大滝も足元に近づき、やれやれと思ったその時、ルンゼ地形に出くわす。それは大滝直下から伸びており、良く見ると大滝から噴き出すように水が落ちている。一旦、ルンゼに出てそこを慎重に詰める。傾斜があるので振り返る余裕もない。手がかりがあるので確実に安全地帯まで上がり、そこから右手の灌木帯に逃げる。やや傾斜の緩んだ斜面をブッシュに掴まりながら斜めに下降していくと、対岸に激しく水を落とす二筋のルンゼ地形が目に入ってくる。ようやく大滝の上流に出たことを実感する。
近づくのも困難 6時55分に高巻きを開始し、沢身に戻ったのが8時丁度。高巻きに要した時間は65分、すっかり消耗してしまった。水平直線距離240メートル、高度差100メートルの範囲を高巻いたのだが、高巻きの最高高度は100メートル近くで、移動距離は350メートほどにもなろうか。疲れるのも当たり前だろう。前半の核心部を突破し一息つく。ここを1時間で通過出来たのは上出来で、自分を褒めてあげたくなる心境である。滝上の様子を見てみたいと思ったが、少し下がっただけで直ぐに諦めた。傾斜のある滑滝が続き確保なしではとても降りられないからだ。遡行を再開すると沢は幾分水量を減らすが、巨岩が転がり小滝なども2個ほど出てくる。直登したり右岸を巻いたりして上がる。左岸のハング上の岩壁を右手に見ると沢は大きく南に方向を転じる。屈曲点には何かあるもので、予想通り幅広の滝(8M)があった。ここは左岸を巻き、直上の滝(8M)は右岸を巻く。水流が強烈で噴き出しているようだ。地形図の滝マークはおそらくこれだと思う。
延々と滑が続く 滝の上からは中盤の核心部が始まる。とにかく、滑床が700〜800メートルも続き、途中にアクセントのように滑滝が現れる。別格のクワウンナイ沢を除けば最大級のそれだろう。Co1310二股は左右とも緩やかな滑滝で合流するが水量はほぼ同量で、ここは右に入る。天気は良いはずなのだが、空はガスに覆われている。ただ、それは薄く、時折青空も顔をのぞかせる。その時の暖かさときたらどうだろう。日高町のピンポイント予報では昼頃からお天気マークなので、これから良くなるはずと期待しながら滑を快適に上がる。滑が終わるとCo1475二股で、直下には木の生えた巨岩が鎮座している。ここは水量の多い右股だが、5メートルの滝なので一旦、左股に入ってから藪を乗越し右股に戻る。Co1525二股、Co1580二股ともに右に入るが、傾斜はグーンと緩くなり、沢もガレだしてくる。三ノ沢カールに上がりつつあることを実感する。既に、稜線も望めるようになり、緑に混じって、所々に赤や黄色が見て取れる。予想以上に紅葉が進んでいるようだ。やがて傾斜がほとんどなくなり、とりあえず、ピーク方向の水流のある沢筋を上がる。
有難い掘り返し ブッシュ類の背丈もあまりなく、ルート変更は容易なので気持ち的には楽である。水流は1750近くまであったが、ピーク直登はハイマツが濃いので、やや西側の浅い沢形を上がることにする。一番楽そうなのは、西の前峰との鞍部(1830)へ上がるルンゼだが、わざわざ移動するのも面倒だ。足首程度のブッシュの中、重い身体を引きずるように超スローペースの登高である。振り返ると、辿りし沢筋と背後の山々が遠望できる。方向からして、二岐岳とか春別岳あたりだろうが‥。稜線へのルートは急峻で、スリップすることしきりである。こんな時に助かるのが羆の掘り返しである。周囲は花畑で、シーズンともなれば可憐な花々で賑わうのだろうが、羆達にとっても天国である。掘り返しは稜線に続く階段で、疲労しきった身体には何とありがたいことか。11時、ピーク直下西の夏道に飛び出す。東の高みに目をやると、山頂標識が見える距離である。そこから10分弱、夏道を辿り待望の北戸蔦別岳頂上に立つ。以前は赤テープだけが棚引く日高らしい頂上風景だったが、今は立派な山頂標識がある。いつ建てられたのだろうか。
紅葉見頃も寒い 額平川方向からガスが次々と湧きあがり、稜線を越えていく。戸蔦別も幌尻もガスの中で、僅かに幌尻北カール、戸蔦別B・Cカールが見える程度である。北側から東側にかけては幾分視界は良くて、1967からピパイロ、伏美、妙敷、十勝平野まで望むことが出来る。1967峰はやはり一際高い。西風も強く、強烈な寒気を運んでくる。ピーク東側の窪地で風を避け、フリースとレインウエアを着込み、冬用の帽子を被り手袋をはく。それでも、指先がかじかむ。ラーメンでもと思ったが、そんなところではない。写真を撮り、行動食を流し込む。30分ほど休んだ後、夏道下降を開始する。歩き始めるといくらか暖かくなるが、額平岳まではまともに西風を受け続ける。登山道側は秋色に染まり、華やか雰囲気を醸し出している。それと、掘り返し。ここの羆はそれが得意のようだ(笑)。「昼から青空」とは裏腹に、空は鉛色で塗りつぶされ、遂には雨も落ちてきた。遡行時でなくて良かったと思いつつ、二ノ沢左岸の急斜面につけられた夏道を下る。「トッタの泉」で沢靴から登山靴に履き替える。ピークでと思っていたが、寒くてその気にならなかった。
自信を得た沢旅 何度かスリップしながらも、右手から沢音が聞こえてくると何となくホッとする。ニノ沢沿いの夏道は、靴底を濡らす程度というイメージだったが、十数回の渡渉で靴の中まで水がしみてしまった。靴が古いせいもあるが、やはり、増水気味なのだろう。出合までの長い下降に耐えると、後は起伏のない山道を淡々と歩くだけ。靴底が剥がれるアクシデントはあったものの、14時30分前に取水ダムに着く。残りは3キロの林道歩き。目的を達成した後だけに、気分も軽やかだ。本降りとなった雨もクールダウンには丁度いい。今季、単独ではせいぜい6〜7時間位の沢行ばかりだったが、今回は10時間を超える沢旅で充実感も比例して大きい。自分の体力や判断、遡行技術などに少しだけ自信が持てた沢行でもあった。
★ 補足 ★ 靴底が剥がれた登山靴は、登山を始めた時に購入したものだった。沢を始めてからは、沢行時の尾根や夏道用の靴として活躍していた。リーズナブルの割には造りもしっかりしていて、酷使によく耐えてくれたと思う。私を山に誘い、沢山の思い出を作ってくれた登山靴に感謝である。
■山行年月
2009.09.09(水)
■天気
曇後雨
■同行者
単独
■山行形態
沢登り
■コース:往路/帰路
二岐沢三ノ沢
夏道
★コースタイム
前夜二岐沢出合車中泊
地点分岐等 時間
二岐沢出合 4:35
取水ダム 5:15
二岐沢三沢出合 6:25
6:40
大滝高巻開始点 6:55
大滝高巻終了点 8:00
三ノ沢カール 10:20
北戸蔦別岳 11:10
所要時間 6:35
北戸蔦別岳 11:40
額平岳 12:10
二岐沢ニ沢出合 14:00
取水ダム 14:25
14:40
二岐沢出合 15:15
所要時間 3:35
自宅18時25分到着
二岐沢本流 Co1000左岸壁
大滝直下小滝 高巻きから小滝
高巻きから大滝 大滝上部の滑滝
ゴルジュ 屈曲点の滝
地形図の滝 Co1225滑滝
co1280付近滑床 Co1300の滝
Co1310直下滑@ Co1310直下滑A
Co1310右股 Co1350付近の滝
Co1420付近滑 1475二股の巨岩
Co1570付近の滝 カール風景
カールバンド ルートの沢形
頂上風景 1967峰遠望
紅葉@ 紅葉A
紅葉B 紅葉C
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