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193.ピリカヌプリ(南日高/1631.2M)
残雪期最後の「勢い」アタックで悲願成就南日高の核心部に到達する
GW前半の武利岳〜武華山縦走から1週間。好天続きの毎日でなんとなく腰が落ち着かない。異常な暑さもあり、今季の残雪期登山はいつになく短いようだ。焦りにも似た気持ちを感じつつ、締めくくりの山行を何処にするか検討する。結果は、南日高のピリカヌプリ。ある意味、武利・武華以上に魅力的な山なのだが、雪を纏った日高の細尾根は恐怖であり、私の中では、行きたいが行けない山となっていた。ただ、今の時期ともなれば、稜線上にあるのは雪庇だけで、少なくとも、雪綾処理に関する難易度は低下しているはずである。反対に、ハイマツ処理などの問題は出てくるが、雪庇と踏跡を効果的に活用することで、ギリギリクリア出来ると判断、ピリカに決める。
【@野塚トンネル→主稜線1151P→1251JP→トヨニ岳南峰(BC)】
Tシャツ一枚で 天馬街道、野塚トンネル十勝側が登山口である。初日は、トヨニ岳南峰のBCまでなので、比較的ノンビルムードで準備、9時過ぎに出発する。豊似川ポン三の沢川は雪解水で増水し、渡渉ポイントが見つからない。ジャブジャブ中を行くのは嫌なので、少し上流に遡ると川はデブリの山で埋まっている。これ幸いにと対岸へ渡る。いつもの稜線1151の北から派生する尾根を使うつもりだったが、取付付近に雪は全くない。沢はデブリだらけでとても上がる気がしない。1151の南に上がる隣尾根を使う。急斜面に腐雪、スノーシューがズルズルと滑ってペースが上がらない。Tシャツ1枚で奮闘するも、稜線まで2時間20分もかかってしまった。早速、雪の状態をチェックすると、日当りの好い斜面の雪はすっかり融け、綾線上にも僅かに雪庇が残っている程度である。予想どおりとはいえ、山行の先行きに不安を感じてしまう。それでも、1251Jp南鞍部までは基本的に雪庇を歩く。勿論、今時の雪庇は危ないものが多く、ヤバイものは迷わずブッシュを漕ぐ。
月夜は眠れない 今年3月、ビビって敗退した1251Jpは完全に山肌が露出しており、明瞭な踏跡を上がる。ここから南峰ピークまでは、標高差は250ほどだが、尾根が細く風もあるので気が抜けない。重い荷でバランスを崩さないように慎重を期す。雪が付いていないので何とかクリアできるが、そうでなければ相当に緊張することだろう。頂上直下で少しだけ雪庇を歩き、14時25分、当然無人の南峰に着く。BCはやや北に下がった所に設置する。足元にはトヨニカールが広がっており、思わず「スキーがあればなあ〜」と。いつものように西側に風除けブロックを積み、細引きでテントをハイ松に固定する。一連の作業を終え、テント内で寛いでいると、入口がバタバタと風で揺れる。今度は東側に風除けブロックを積む。北には形の良いトヨニ岳北峰が聳え、その左奥に明日アタックするピリカヌプリが見える。心なしか近く見えるが、やすやすと登頂を許してくれるものかどうか‥。早々とシュラフに潜り込むが、寝付けない。テントから出てみると、月夜に照らされ山並が薄い陰影のように浮かび上がる。東には十勝の街の明かりが、そして、西には日高のそれがぼんやりと輝いている。日高と十勝を分かつ主稜にいる自分を痛感する。

【ABC→トヨニ北峰→1512P→ピリカヌプリ→BC→主稜線1151P野塚トンネル】
ヘッデン点けて アタック日は午前2時過ぎに起床。BC・ピリカ間は6キロほどの距離だが、アップダウンも多く消耗するルートである。ピストンには8時間前後を見ておかなければならず、雪の状態によってはもっとかかるかもしれない。加えて、お天気が後半弱いながらも崩れるという予報が出ているのだ。早立ちは必須条件とばかりに、ヘッデン点けて午前3時40分にBCを出る。こんな早立ちは私の登山史では初めてである。浦河沖の洋上に鈍く反射する月明かりを眺めながらの稜線北上が始まる。高度がやや上がったせいかBCからは雪庇の付き方が安定してくる。一段と軽量化したアタック装備も相まって、いきなりトップギアでエンジン全開である。20分でトヨニ岳北峰で、ここからは全く未踏の綾線である。主稜線は北西に針路を変える。4時も過ぎると日の出は近く、東の空が赤くなりだす。周囲に光と温かさが満ちてくるのを感じる。ヘッデンをアウタージャケットのポケットに仕舞いこむ。トヨニ北峰からは一旦下がり、コルからは緩やかな登りが続く。1486pからルート中の最高点1512pと、順調すぎるほどのペースである。
これって登山道 BCのあるトヨニ南峰はすでに遠く、トヨニ北峰は白い北面を抱え端正な山容を際立たせている。そして、特筆すべきは、北峰から北東に伸びる支稜の豊かさで、1438ピークのピラミダルな山容に目を奪われてしまう。遠かったピリカが徐々に近づいてくる。復路の登り返しが辛い1512pの北から140メートルほど高度を下げる。1384pから1338p辺りまでは雪庇が付いていなかったり、崩壊寸前だったりで稜線上を行く。ブッシュ漕ぎかと思いきや、ここにも踏跡があり体力を温存することができた。1338pはちょっとした分岐で、目指すピリカが圧倒的な存在感で迫ってくる。ここから見るピリカは「美しい山」ではなく、東西に裾野を広げた「雄大な山」に見える。雪はほとんどなく、それを利用しての登高はできない。一息入れた後、登山道かと見まがうばかりの踏跡を辿る。ルート中の最低コル1315標高点を過ぎると、ピークまで標高差310メートルの一気の登りである。左足下は日高幌尻川源頭で右足下はヌピナイ左股川(=クマの沢川)源頭である。ナイフリッジも2か所出てきて緊張を強いられる。
夢が現実に変る 「ヤオロの窓」のごとくポッカリと谷底が口を開けているのである。背の低いハイ松などもあるからいいものの、雪に覆われた時の緊張感は想像を絶するものがある。直下で、クラストした幅2メートルほどの雪面を横切るシーンでは迷わずピッケルを出す。もう、登頂の障害となるものは何もない。半ば「夢」だったピリカヌプリがもうすぐ現実に変わるのである。その確信で心は満たされ、自分自身喜びを抑えきれないほどである。BCから2時間40分、ウラシマツツジに迎えられピリカヌプリの人となる。思わず「来たぞ!」と叫んでいた。独り占めするのが申し訳ないような大眺望が広がっている。北には、独立峰然とした神威岳、その東のソエマツ、ピリカとともに南日高三山を形成する山が目立つ。ソエマツまでは意外と近い感じで、雪を利用すれば3時間もあればいけそうな気がする。今夏、ヌピナイ右からソエマツ・ピリカと廻るつもりだが、無雪期の綾線は厳しいものになるに違いない。その先に目を移すと、1839峰、そして、遥か遠くに顔を覗かせる盟主カムエクが際立っている。その山容や風格は岳人の心をつかんで離さないだけのことはある。
誰かと繋がって 一方、南側はというと、トヨニ岳南峰までのシャープな稜線の美しさに見とれてしまう。十勝岳の重量感はピリカからも分かるが、最奥の楽古岳がとても大きく見えるのは意外だった。いま、自分が南日高の核心部に身を置いていることをイヤというほど実感させられる。友人達に写メールを送ると直に祝福と羨望の返信が入る。単独行動を旨とするが、誰かと繋がっていたいという思いは人一倍強いのかもしれない。たっぷり40分ほど休んだ後、下山を始める。「無事に下山する」ことが最大の価値であり、とにかく、1338pまでは慎重の上にも慎重を期す。綾線上の東斜面はまだ厚い雪に覆われているが、中腹付近には大きな亀裂や全層雪崩の兆候も明確に見て取れる。残雪期登山も今週末位が限度のようである。土・日で誰か上がってくるかもしれない、そんなことを思いながら南下する。だが、往路のハイペースが祟ったようで小休止を繰り返す。1512pの登り返しなど、我ながら恥ずかしいほどの喘ぎようだった。トヨニ岳北峰の登りでは、北斜面に鹿のトレースが付いていた。急斜面をほぼ真横にトラバースしていて、人間なら絶対にとらないルート取りに驚くやら感心するやら‥。

人間は精神動物 北峰まで戻ると、BCの黄色いテントも豆粒のように見えてきて俄然力が出てくる。「気合ダ!」ではないけれど、人間の精神力たるや侮ることなかれである。北峰では、登山者が落としたのであろう、立派なコースフラッグとスリーピングシートがあった。体力に余力があれば下ろしてもいいのだが、その力は残されていない。写真を数カット撮りBCへ急ぐ。BCではカップラーメンを腹に詰め込み、小一時間でテントを撤収する。予定通り12時に下山の途につくことができ、安堵の胸をなでおろす。ピリカピストンの状況によってはもう一泊と考えていたほどである。荷が重く、細尾根のきつい下りは堪えるが、淡々と耐えるしかない。あとは時間が解決してくれるはずだから‥。それだけに、下降尾根ポイントに着いた時は正直嬉しかった。重い荷も苦にならず、尾根を駈けるように下り、午後3時前に下山を完了する。豊似川ポン三の沢川はスノーブリッジまで上がるのが面倒なので、川の中をジャブジャブと渡ったことはいうまでもない。
勢いは恐ろしい 2日目は土曜日なので、もしかするとピリカ狙いの登山者に出会うかもしれないと、密かに期待していたが、誰とも会わずじまいであった。トヨニ岳だけの日帰組もいなくて、GWで残雪期登山はシーズンを終えたようである。もしかすると、私が最後だったりして‥。ピリカヌプリは、今夏に谷本さんとヌピナイ右股川790上二股を起点に、ソエマツ・ピリカヌプリと、一廻りする予定だった。よもや、残雪期にその頂を踏めるとは思ってもいなかったので望外の喜びである。2週続けての山泊山行、「いきおい」とはこんなものなのかと思う。ただ、好天任せにガムシャラに山に挑んだかといえばそうでもなく、私なりに「計算」とか「読み」を働かせたことも事実で、少しは力量がついたのかなあ、などと一人ほくそ笑んでる次第である。そして、無謀にも、来季はソエマツまで足を伸ばそうという気になっているから恐ろしい(笑)。ともあれ、残雪期の登山はこれで終了し、後は、6月の沢シーズンをジッと待つだけである。ほぼ1ヶ月、充電期間には充分過ぎるが、果たして、体調を整え心静かにその時を待つことができるのか、いささか自信がない。
★ 補足 ★ このルートに関して少し補足しておこう。先ず、残雪期のピリカヌプリ日帰は可能かだが、結論から言うと「可能」ということになる。但し、条件としては、行動時間が13時間以上に及ぶと考えられるので、アタック装備で健脚者であることが求められる。早立ち、ヘッデン点灯しての行動など当然である。次に、綾線上の踏跡についてだが、今回は1251南鞍部〜トヨニ岳南峰間、1384P〜1338P〜ピリカヌプリ間で踏跡を利用したが、かなり明瞭で、札内岳〜札内JP間や1573P〜ペテガリ岳間よりは歩きやすかったと思う。勿論、ブッシュ類の成長も考慮しなければならないが、使えるという印象である。
■山行年月
2009.05.08(金)
  .05.09(土)
■天気
晴/晴
■同行者
単独
■山行形態
積雪期登山
■コース:往路/帰路
野塚峠・トヨニ岳
コースタイム(1日目)
自宅午前7時00分出発
地点分岐等 時間
野塚トンネル 9:05
綾線1151P 11:25
1251JP 12:55
13:05
トヨニ岳(BC) 14:25
所要時間 5:20
1151からトヨニ 南峰から南望
BC奥にピリカ トヨニ岳北峰
稜線からピリカ@ 稜線からピリカA
稜線から南望 ピリカ頂上@
全層雪崩 切れ落ちる足下
ピリカ頂上A 頂上から北望@
頂上から北望A 神威岳
ソエマツ岳 頂上から南望
下降方向 GPSトラック
コースタイム(2日目)
地点分岐等 時間
トヨニ岳(BC) 3:40
トヨニ岳北峰 4:00
1512P 4:40
4:50
1338P 5:15
ピリカヌプリ 6:25
所要時間 2:45
ピリカヌプリ 7:00
1512P 8:55
9:05
トヨニ岳(BC) 10:45
所要時間 3:45
トヨニ岳(BC) 12:05
綾線1151P 14:00
14:10
野塚トンネル 14:50
所要時間 2:45
自宅午後5時35分到着