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 Vol.35            奇跡のシンフォニー(2007年/アメリカ/東宝東和/114分)
■鑑賞日 2008.06.30(月) ■劇場名 シネマ太陽帯広
■作品データ
■監督 カーステン・シェリダン
■キャスト エヴァン・テイラー/フレディ・ハイモア、ライラ・ノヴァチェク/ケリー・ラッセル、ルイス・コネリー/ジョナサン・リース=マイヤーズ、リチャード・ジェフリーズ/テレンス・ハワード、マックスウェル(ウィザード)/ロビン・ウィリアムズ、アーサー/レオン・トマス・3世
■ジャンル ドラマ(音楽)
■あらすじ

11年と16日間、両親が必ず迎えに来ると信じながら養護施設で暮らすエヴァン。彼は、両親の顔も名前も知らないが、心に聞こえてくる音を通じてつながっていると信じていた。そして、ある日、施設を飛び出し、N.Y.のマンハッタンへ向かう。そこでウィザードと名乗る男と出会いギターを習う。それは、自分の想いを楽器に託して表現できるということに気付いたからだった。勿論、自分の音楽はこの世界のどこかにいる両親の元へ届くとも信じて。エヴァンはストリートミュージシャンとして音楽の才能を開花させていく。一方、結ばれぬまま別離したエヴァンの母ライラと父ルイスも、それぞれの想いを胸に音楽の世界に戻りマンハッタンを目指す。徐々に近づいていく親子だが、エヴァンを利用して大儲けを企むウィザードが障害となって立ちはだかる‥。

■コメント

最近の映画紹介では、「泣ける」とか「感動もの」といったコピーが使われることが珍しくない。スポーツの世界でも、アスリート自らが「感動してもらえるプレーを」などと平気で発言する。何やら、感動の大安売りの感無きにしも非ずだが、感動は結果であり目的ではないはず。本末転倒というべきだろう。ついでに言えば、感動するかしないかはこちらの問題であり、強要される筋合いではないと。
今回観た「奇跡のシンフォニー」にも、「とびっきりピュアな涙を」とのフレーズが躍っており、いささか食傷気味だったが、映画音楽に関心があり劇場に足を運んだ一本である。ストーリーは、生き別れになった親子が11年余の歳月を経て再会を果たすのだが、彼等をめぐり合わせたのが他ならぬ音楽だった、という内容である。この手の映画のパターンとしては、想像を絶する艱難辛苦を乗り越えるシーンが必ずと言っていいほど登場するが、本作ではあまり描かれない。それもそのはずで、両親は郷愁と後悔の念に苛まれてはいたものの、経済的には恵まれた富裕層であったし、子供もまた、施設暮らしではあったが、音楽の天分に恵まれていたのである。初めから毛並みが違うのである。孤児院を抜け出した後は、運命の糸に操られるように様々な人たちとの出逢いがあり、その度に音楽的才能を開花させていく。期を一にして、父や母もまた嘗て愛した音楽を再開し、親子が音楽を基盤に、ある一点に向かってひた走ることになるのである。強引な展開や嘘みたいな4偶然の重なりが続くが、このあたりを素直に受け入れることができるか否かが評価の分岐点となるだろう。私としては、否定的な印象である。音楽を軸としているが、実は神のなせる奇跡を描いた作品としてみれば納得できたりするのである。その意味では、邦題の「奇跡の‥」は正直なタイトルだと言えるかもしれない。
意外性もドンデン返しもなく、ハッピーエンドの王道を行くような映画で、展開の妙味には乏しいが、いくつか見どころもある。例えば、街中に溢れる様々な音、その音達を関連・調和させながらメロディを作り上げていくシーンは唸らせるし、ライラとルイスが異なるステージで演奏している(勿論、楽器も曲も違う)にも拘らず、互いに引きあうように徐々にシンクロしていくシーンは見事だった。また、ピアスをしたロビン・ウィリアムズも渋い。主人公の音楽的才能を見抜き、大儲けを画策するという腹黒い役どころだが、徹底して憎めないのは彼のキャラのせいだろうか。
主人公エヴァンを演じるのがフレディ・ハイモアで、流石に「ネバー・ランド」の頃よりは大人びているが、音と触れ合うことが、ギターやピアノを奏でることが至上の喜びという少年を好演していた。母ライラ役のケリー・ラッセル、父ルイス役のジョナサン・リース=マイヤーズとも、演奏シーンなどは中々の熱演だったが、特に、マイヤーズにはブレイクの予感が‥。期待した音楽だが、クライマックスのオーガスト・ラプソディまで沢山の曲が登場するが、正直、インパクトのあるそれはなかったように思う。今年度アカデミー賞オリジナル歌曲賞にノミネートされた「Raise It Up」なども例外ではなかった。ま、こればかりは好みの問題でもある訳で、正確には私の好みではなかったということだろう。
原題は「AUGUST RUSH」。平均的な作品で☆3個は少し甘いかも‥。

 Vol.36            ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年/ディズニー/158分)
■鑑賞日 2008.07.13(日) ■劇場名 CINEとかちプリンス劇場
■作品データ
■監督 ポール・トーマス・アンダーソン
■キャスト ダニエル・プレインビュー/ダニエル・デイ=ルイス、ポール・サンデー/ポール・ダノ、ヘンリー/ケヴィン・J・オコナー、フレッチャー/キアラン・ハインズ、H.W/ディロン・フリーシャー
■ジャンル ヒューマンドラマ
■あらすじ
石油採掘によって莫大な富と権力を得た一介の炭鉱労働者ダニエル・プレインビューは、ある青年から「故郷の広大な土地に石油が眠っている」と聞き、息子のH.W、パートナーのフレッチャーとともにカリフォルニア州リトル・ポストンへ向かう。そこは不毛の地で、街の人々はカリスマ的な神父イーライ・サンデーが主宰する教会にのみ頼って生きていた。ダニエルはそこで安い土地を買占め、幸運にも再び油田を掘り当てる。しかし、油井やぐらが火事になり、幼い息子は聴力を失ってしまう。プレインビューは精神に混乱をきたした息子を彼方の土地へ追いやる一方で、宗教を利用し、手を血で染めながら旺盛な欲望を満たしていく。彼の行動は周囲との軋轢を引き起こし、親子の絆さえ脅かしていく。そして、それは彼自身の破滅への序章でもあった‥。
■コメント

2008年アカデミー賞2部門(主演男優賞、撮影賞)を受賞した作品である。一応、メジャーな映画ということになるが、意外にも、シネコン系ではなく、市民ボランティアが運営するミニシアターでの上映となった。映画の配給システムについては全くの門外漢なので事情は不明だが、大手シネコン系がペイしないとみたのだとすれば嘆かわしいというほかない。もっとも、良質だから興行的に成功するとは限らない訳で、この映画のように重厚で硬派なそれは、観ていて楽しいわけでもなく、今時上映時間158分というのもシンドイとすれば、積極的になれないのも分かるような気もするが‥(あくまで仮定の話ですが)。
映画は、石油ブームに沸く20世紀初頭のアメリカ・カリフォルニアが舞台。石油採掘でアメリカン・ドリームを実現した主人公の果てしない野望と血塗られた生きざまを描いた大河ドラマである。
砂煙舞う荒涼とした大地、セリフも音もなく一人黙々と井戸を掘り続ける主人公。映画はこんなシーンで始まる。少し退屈で睡魔に襲われそうになるが、今思えば、主人公の人生観を考える上で示唆的なシーンだった。人間との関係を徹底して排し、富や権力を志向する。そのためなら宗教をも利用するし、殺人も厭わない。子供だって平気で切り捨てる。孤独で強欲、そして、非情。どうすればこんな人間になれるのだろうか。残念ながら、映画からその答えを直接見出すことはできないが、唯物論的には全ては「富」のなせる技ということになろうか。
「俺は悪行を積み重ねてきた」とか「俺は悪が見える」とうそぶく主人公の存在は映画に大きなインパクトをもたらしている。もしも、穏健で善良な性格の主人公だったら全く平凡なそれになったことだろう。僅かに、油井の爆発事故に遭遇した息子を急いで助けに行ったり、弟と語る人物と打ち解けて一緒に仕事をするようなところには人間味を感じる。悪の権化のような主人公でも善悪の葛藤に苛まれていた証かもしれない。彼の本質を見抜いていたのがカリスマ牧師だが、主人公もまた、牧師の、そして宗教の欺瞞性を見抜いていた。宗教は迷信であり、ショーだと喝破しつつも富のためなら、信者にもなるし、罪の告白もしたりするのである。
子供との関係についても、最初は仕事をスムーズにさせるために利用し、油井事故後は施設に追いやってしまう。息子が大人になり「メキシコで石油採掘を」というと、商売敵だと言って親子の縁を切る始末。徹底して自分本位なのだが、ふと、こんな父を親に持つ子供のことを考えると、「あなたの血をひいていなくてよかった」と息子に言わせるのは親の愛情だったかもしれないと‥。
そして、衝撃的なエンディング。牧師と主人公、ともに本質を露わにして静かに対決する。そして、最後に主人公が牧師を‥。もし、清貧で高潔な牧師だったら状況は違っていただろうが。最後に「終わった‥」とつぶやく主人公。牧師との対決が終わったのか、自分の悪行が終わったのか、どちらともとれるようなそうでないような、含蓄ある言葉である。
重厚でシリアスな内容だが、映像的にはとても美しいし、ヴァイオリンの繊細な音色も効果的である。それ故、主人公の汗の臭いや息遣い、そして、血塗られた行為の数々がよりリアルに伝わってくるのかもしれない。
強烈なキャラクターの主人公を演じるのがオスカー俳優ダニエル・デイ=ルイスである。渾身の演技は最後まで私をスクリーンに釘付けにした。教会で顔を紅潮させ額に青筋立てて「私は息子を見捨てた」と言わされるシーンは圧巻だった。本作で2度目のオスカーを手にした訳だが、当然すぎるほど当然である。
突き詰めて考えてみると、この映画は、富や宗教に翻弄される人間達を象徴的に描いたものであるような気がする。その意味では、「宗教は阿片」であり、「富」もまた人間を破滅に導く側面があることを思い知らされる。アメリカンドリームという言葉は、正のイメージを私達に抱かせるが、裏には目を覆いたくなるような現実があるのかもしれない。ましてや、若きアメリカ、そこには人間を狂気に駆り立てる時代背景があったであろうことは容易に想像できるのである。
158分は少し長いが、文句なしに名作で、本コンテンツ2作目、納得の★5個評価である。